トライアスロンというと、毎年10月に行われるハワイのアイアンマンレースを思い浮かべる人も多いでしょう。「鉄人レース」の名で呼ばれる通り、スイム3.86km、バイク180km、ラン42.195kmを連続して行うタフなレースなため、「過酷な競技」とのイメージがついて回ります。
しかし、少しずつ注目されて人気が高まると、観戦しやすくテレビ向きなレースの形態が出現しました。1982年に始まった米国トライアスロンシリーズで、スイム1.5km、バイク40km、ラン10kmの合計51.5kmのレースが採用されると、世界選手権など多くの大会でこれがスタンダードとなり、「オリンピック・ディスタンス」と呼ばれるようになりました。2000年のシドニーオリンピックから正式な五輪競技となったトライアスロンも、この51.5kmで競われます。
ロンドンオリンピックでは、男女とも地元イギリス勢が非常に強く、金メダルが有望視されています。プレ大会として行われた1年前の世界選手権シリーズ(WCS)ロンドン大会では、男子がアリスター・ブラウンリー、女子がヘレン・ジェンキンスのイギリス勢がアベック優勝を遂げているのです。アリスターの弟ジョナサンも3位に入る実力を見せており、男子は順当ならブラウンリー兄弟のワンツーフィニッシュが濃厚です。ロンドンっ子の応援にも自ずと力が入るでしょう。日本勢も前回の北京五輪で井出樹里(トーシンパートナーズ・チームケンズ)が日本人初の5位入賞を果たしていますから、今回はさらにその上の「メダル獲得」が現実的な目標として視野に入っています。8月4日(女子)と7日(男子)には、ぜひトライアスロンに注目してもらいたいです。
気になる五輪のコースは、ハイドパークを中心にバッキンガム宮殿などロンドンの名所旧跡をめぐる特設会場が舞台となります。当然ながら選手は風景を楽しむどころではないでしょうが、テレビで観戦している視聴者はレースの傍らプチ観光を楽しめるでしょう。
勝負の行方を占ううえで、最初のポイントになるのがスタート種目のスイムです。近年は「スイムを上位で上がってバイクを先頭集団で走り、ランでライバルたちと真っ向勝負!」というのが“勝利の方程式”になっており、まずはスイムで上位に食い込んでレースの主導権を握れるか否かのカギになります。
スイムでは0.75kmのコースを2周回するのが一般的ですが、五輪本番は池につくられた1.5kmのコースを1周回する設定です。スタート台から第1ブイまでは約300mの長い直線となります。このブイを回る際に選手同士が錯綜して水中バトルが起きるのですが、巻き込まれると大きくタイムロスしてしまうため、何としても避けたいところです。最初の300mを全速力で泳ぎ、「上位でスムーズにブイを回りたい」というのが有力選手たちの本音です。
そこでイギリスは、ジェンキンスやブラウンリー兄弟を確実に勝たせるため、水先案内人となって補佐する選手を3人目の代表として選ぶ“チーム戦略”を採ったのです!女子は抜群の泳力を持つ20歳の新鋭ルーシー・ホールが、男子はスイムとバイクで突出した力を持つスチュアート・ヘイズがアシスト役に選ばれました。
日本は実力順に女子3人、男子2人を選んでいますが、女子の井出と足立真梨子(トーシンパートナーズ・チームケンズ)、男子の田山寛豪(NTT東日本・NTT東日本西日本/流通経済大学職員)はスイムを得意としています。また、8月上旬のロンドンは日本と違って涼しいため、ウェットスーツ着用(水温20℃以下)のレースになる可能性も十分にありますが、そうなればウェットスイムを得意とする足立にとっては非常に有利です。イギリス勢が先導するであろう流れにうまく乗っていければ、勝機は広がってくるでしょう。
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